インドの友人から全世界に向けて

   ニューヨーク タイムズ紙、2002年12月1日   

サイラム!

スワミの大学の卒業式に参加するために、インドの大統領がプッタパルティを訪れましたが、大統領の一行には、ニューヨーク タイムズ社の通信員が同行していました。スワミが大統領にインタビューをお与えになったとき、通 信員はベランダに座って、大急ぎでメモを書いていました。アニール クマール教授がその隣に座って、通 信員の質問に答えました。次にご紹介しますのは、米国で最も権威のある新聞であるニューヨーク タイムズに掲載された、その通信員が書いた記事です。それは間違いなく、私たちがサイ オーガニゼーションに関する見解を広げて、神のミッション(使命)における自分たちの普遍的な責任を認識し、スワミが慈悲深くも私たちにお与えくださった責任を全うすることに、私たちが感謝を込めて心から取り組むべき時が到来したことを示すものです。

インドの友人から全世界に向けて

キース ブラッドシャー

【プッタパルティ(インド)】−1998年のインドの核実験を監督したことでよく知られているインドの大統領が、先頃、インド国内最大のアシュラムを公式訪問して、非暴力を説く聖者に面 会し、その祝福を受けた。

その訪問は、世界の178カ国に帰依者を持ち、インド国内のみならず、諸外国の大統領や首相たちをも引き付ける、並外れた聖者、シュリ サティア サイ ババの魅力を強調するものであった。

1947年の独立直後の何年かは実に鮮明であったインドにおける政教分離は、近年あまり明確なものではなくなっている。ヒンドゥー教国粋主義を強調するバラティア ジャナタ党が政府与党になったことにより、その傾向は特に顕著なものとなっている。

帰依者やその他の人々によってババと呼ばれているこの聖者の魅力の一端は、1940年代以来、彼が、他に類のない宗教の混合と、他宗教に対する寛容の精神を説き続けてきたことにある。

ここへの公式訪問は、インドの政府関係者の風変わりな公務の一つになっており、同時にそれは最も華やかなもののうちに数えられている。ババの宗教の混合は、伝統的なヒンドゥー教の教義をはるかに超えた広がりを持っており、インドのA.P.J.カラム大統領のような回教徒も含めた、様々な宗教に属する政治家たちが彼に引き付けられている。

もと原子物理学者であったカラム大統領は、青と白に塗り分けられた空軍のジェット機で、この南インドのアシュラムの私設飛行場に到着した。オリーブ色の制服の警察官たちの敬礼に迎えられた大統領は、自動車の行列の先頭車両に乗り込み、緋色のターバンを巻いた側近のシーク教徒の軍人たちの車両がそれに続いた。

アシュラムに至る道路の両側は、スワミの言葉が刻み込まれた石碑によって縁取られていた。そのうちの一つには、英語で「お金は来ても去っていくが、道徳は来ると育つ」と書かれており、ババという簡単な署名が入っていた。ババとは聖なる父という意味である。

アシュラムの入り口に見える丘の中腹には、イエスや仏陀やハヌマーン(猿の姿をしたインドの神)の、明るい彩 色が施された巨大な像があった。その先には、中国式の寺院の大伽藍があり、慈悲深い微笑を浮かべ、手を上げて祝福しているババの姿が、大きな屋外掲示板に描かれていた。

舗装された道の両側には、二階建ての濃いピンクの近代的な建物が立ち並び、30フィート(9m)ほどの高さのギターや木製の太鼓の像が、不釣り合いに点在している。インド製の不恰好なアンバサダーの自動車は、バタバタと音を立てながらそこを通 り過ぎ、アシュラムの大ホールの前に止まった。

ホールの床には、10000人以上の帰依者たちが、あぐらをかいてぎっしりと座っていた。女性は明るいエメラルドグリーンや、深紅や藍色の絹のサリーを身にまとい、男性は純粋さの象徴である白い半そでシャツと白の長ズボンを着ていた。

カラム大統領は、敬意を表して茶色の靴を脱ぎ、長靴下を履いた足でホールの前方まで歩いて行った。少数の随員たちも、ホールの外の花の咲いた茂みの下に靴を置いて、大統領の後に従った。ふさふさとした黒い髪を持つ小柄な76歳のババは、長い衣を身に着け、すり足で歩を進めた。

帰依者たちは、ババの注意を引きたいと願いながら、ババの動きに合わせて慎み深く身体の向きを変える。近くにいた数少ない西洋人の一人は、中年の男性で、同じくあぐらをかいて座っていたが、彼はババが彼に向かって手を振ったように見えたとき、胸を軽く叩いた。その感極まった様子は、身体の揺れ具合で見て取れた。

公の場では帰依者たちにすら多くを語らないことで有名なババは、無言のままカラム大統領に歓迎の意を表した。二人は、ヒンドゥー教の神々のレリーフが施された磨きのかかった木製の扉を通 って、ババの聖所へと消えていき、群集が静かに待つ中で、15分ほどの時間を過ごした。

ババの古参の側近の一人が、その霊的指導者の名前は、シュリ サティア サイババと言い、それは、神聖な、真実の、母にして父なる神という意味であると耳打ちしてくれた。

真理・平和・愛・非暴力・正しい行いの五原則を説くババは、ヒンドゥー教を代表するだけでなく、宗教の一体性の象徴であり、すべての宗教を代表する存在であると、その側近は語った。

聖所から出て来た大統領は、随員たちを従えて大ホールを出て、靴を履き、再び車に乗ってアシュラム内のゲストハウスへの短い道をたどった。大統領は、その短時間の面 談の中で、どのようにすれば道徳的価値と科学を組み合わせた教育制度を作ることができるかということについて、スワミと話し合ったのだと言った。

「道徳的価値と科学が融合すれば、正しい知識を持つ市民が生まれる」と、カラム大統領は語った。この国の議会民主主義の中での大統領の役割は、主に儀礼的なものである。インド国会は、この7月に彼を大統領に選出した。

大統領は、回教徒出身の背景をもっているが、人口の五分の四がヒンドゥー教徒である国の政治家の中では珍しい存在となっている。彼は長い間、インドの核兵器開発は地域の平和を守るために必要なのであると主張し続けてきたのであり、戦時における核の使用を意図しているわけではない。

ここ、インドのアンドラ プラデーシュ州のN. チャンドラバブ ナイドゥ知事は、ババはただの聖者ではなく、公益事業のエキスパートでもあると言う。ナイドゥ氏は、アンドラ プラデーシュ州の州都であるハイデラバードを、マイクロソフト社やオラクル社のような米国の企業が何千人ものコンピュータ プログラマーを雇用するハイテクの中心地に作り変えた過程の中で、繰り返しスワミの助言を求めたことを説明してくれた。

ババは、世界中から寄せられた寄付金を使って、この近郊に貧しい人々に無料で医療を施す病院を二つ建設した。現在ババは、五千万ドル(約60億円)をかけて、飲料水と灌漑用水のシステムを構築中であると、ナイドゥ氏は語った。

スワミは、あれほど科学技術に興味を持っていながら、Eメールを使うことを拒否し、電話の受話器を取り上げることすらないそうである。「スワミは、誰とも通 信をせず、電話もお使いになりません。誰もがここに来なければならないのです」と言う知事の言葉には、かすかな苛立ちが含まれていたように感じられた。

欄外記事

 すべての宗教に対する寛容の精神を説く聖者のアシュラムでの儀式には、学校の児童とその教師たちが参加した。この地への公式訪問は、インドの政府関係者の風変わりな公務の一つとなっている。
 インドのA.P.J.アブダル カラム大統領(左)。178カ国に帰依者を持ち、インド国内のみならず、諸外国からも指導者たちを惹き付けている聖者、シュリ サティア サイ ババと共に。
 聖者によってプッタパルティ近くに建てられた二つの病院では、無料で医療が施されている。