バガヴァッド ギーター

「バガヴァッド・ギーターはあらゆる聖典の精髄です。霊性修行者は皆、ギーターの学習に励むべきです。またギーターを、日々の生活における、重要な実践的価値を含む書物であるとみなすべきです。ギーターは多くの人々に慰めを与えてきました。ギーターは皆さんの霊的成長を助けるでしょう」
―ババ―

ヒンドゥー教の基本聖典として、「ヴェーダ」と呼ばれる一連の聖典がありますが、そのほかの有名な聖典として、二大叙事詩(*)である『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』があります。『マハーバーラタ』は18 巻10 万詩節からなる世界最大級の叙事詩です。『バガヴァッド・ギーター』(「神の詩(うた)」という意味)はこの第6 巻に収められた小編で、18 章700 詩節からなり、インド聖典のうちで最も有名な書です。ギーターはヒンドゥー教徒から宗派を超えて崇められており、世界の様々な言語に翻訳されて、世界中の多くの人々に尊ばれています。

* 叙事詩…神話・伝説・古代英雄の事跡・歴史上の事件などを、物語のように述べた詩。

「ギーターは神の使者です。ギーターは宇宙の母です。ギーターは人が人生の大海を渡るための手段です。ギーターはすべての霊的探求者の支えです」
―ババ―

このページでは、ギーターの18 章700 詩節の中から、ギーター全体の要約であると言われる第2 章(72 詩節)と、とても大切であると言われている第12 章(20 詩節)を紹介します。

「あなたがたは皆、毎日ギーターを学ばなければなりません。2、3 の詩節を読んで、その意味について自分自身で瞑想しなさい。ハートの静寂の中でその意味が明らかになるでしょう。詳しい解説を読んだりする必要はありません。ギーターの一つひとつの言葉が宝石です。耳や鼻や首にそれ以上に宝石をつける必要はまったくありません。あなたのハートにギーターの詩節の宝石をつけなさい。ギーターの詩節によってあなたの知性と手が活性化するようにしなさい」
―ババ―


ギーター第2 章に至るまでの『マハーバーラタ』のあらすじと、ギーター第1 章のあらすじです。

名門バラタ族には、パーンドゥ王の5 王子(パーンダヴァ5 王子)と、ドリタラーシュトラ王の100 王子(カウラヴァ100 王子)があり、彼らはいとこ関係にありながら、後者(100 王子)は前者(5 王子)の有徳と繁栄をねたんで、ことあるごとに5 王子を陥れようとしました。

そのたくらみは100王子の長兄ドゥルヨーダナが5王子の長兄ユディシュティラを賭博に誘って打ち負かすことによって成功し(第2 巻)、5 王子は辱めを受けたあげく領地を奪われ、12 年間の国外追放を宣告されます(第3 巻)。13 年目は素姓を隠してビラータ王の宮廷に住み(第4 巻)、約束を果たして王国の返還を迫りましたが、100 王子の側はこれに応じなかったため(第5 巻)、ここに両軍は聖地クルクシェートラに相会して、18 日間の激戦に突入します。

そしてこの戦闘の幕が切って落とされようとしているその時と場所が、神の詩(うた)、『バガヴァッド・ギーター』の舞台です。ギーターは盲目の老王ドリタラーシュトラが、御者であるサンジャヤの報告を受けるという設定になっています。

語り手のサンジャヤが戦況を全部見られるように、聖者ヴィヤーサ(『マハーバーラタ』の作者)は彼を千里眼にします。つまり戦場のすべてを見渡せる能力を授けます。この恩寵によって、彼は盲目の老王に戦況を逐一報告します。

ギーターの第1 章では、パーンダヴァの王子アルジュナが、戦うべき相手を見定めるため、両軍の間に戦車を進めて敵軍を見渡し、そこに大勢の親類や友人たち、自分の師と仰ぐ人々が立っているのを見て、一族を滅ぼす戦いの意義について悩み、戦意を喪失します。そしてこれに続く第2 章において、絶望するアルジュナにクリシュナはその教えを説き始めるのです。

第2章 サーンキャ ヨーガ(知識の道)

全部で18章あるギーターの中でも、サーンキャ・ヨーガ(第2章)は非常に重要です。マハトマ・ガンディーは、心が落ち着かず混乱しているときは、サーンキャ・ヨーガの章を2回か3回読むことにしていました。それによって、心に平安が戻ってきたのです。サーンキャ・ヨーガはギーターの命です。この(サーンキャ・ヨーガという)名前は、本章の中で、サーンキャの探求(目に見えるものの本質の追及)が行われていることに由来します。サーンキャ・ヨーガは、アルジュナにスティタプラグニャー(完全に無欲で真我≪アートマ≫意識を確立している人)の特質を明らかにして、彼の迷妄を追い払いました。』
〔Summer Showers in Brindavan 1979, p34〕

「現代社会には霊的価値の入り込む余地はない」という誤った考え方が広がっています。人々は、霊性と世俗の社会とを両立することはできないという、間違った前提を受け入れているのです。クリシュナは、サーンキャ・ヨーガの中で、こうした誤った認識を取り除きます。多くの人は、霊性は魂の救済のみに関係するものであると誤解しています。実は、霊性こそは社会の根幹をなすものであり、社会の進歩と結束にとって必要不可欠のものです。霊性が社会に占める重要性と、霊性と社会の関連の深さは、いくら強調してもし過ぎることはありません。
〔Summer Showers in Brindavan 1979, p24〕

朗読音源

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