新年のごあいさつ
サティア サイ オーガニゼーションでは、一九九五年の御降誕祭から二〇〇〇年の御降誕祭に向けて、五年間を五大道徳(真理・真実、正義、平安、非暴力、愛)の年と定め、真実の年、正義の年、平安の年の霊性修行を進めてきました。今年は非暴力がテーマとなりますが、非暴力だけに関心が集中して他の道徳的価値が疎かになることがないように、「道徳の年─非暴力」といたしました。五大道徳の全体的な理解を通して、非暴力の霊性修行を進めていきます。(想う愛は真理・行う愛は正義・感じる愛は平安・悟る愛は非暴力)
非暴力とはどういうことでしょうか? 非暴力(アヒムサ、アヒンサー)は、今世紀前半マハートマ ガンジーによって世界中で有名になりました。仏陀は、非暴力は至高のダルマ(法)であると言いました。日本においては、伝統的に仏教を通じて非暴力が取り入れられてきました。仏教において非暴力は不殺生と呼ばれ、他に害を与えない、他の生き物を殺さないということで主要な徳目の一つとされてきました。
スワミの御教えから真の非暴力とは何かについて考えていきたいと思います。最初に、非暴力は、暴力を避けるという消極的・否定的な意味でとらえるのではなく、すべてに愛を広めるという積極的・肯定的な意味でとらえて、心の状態を積極的にしていく必要があります。スワミのおっしゃる積極的な心の状態というのは、世俗的な事物に執着することではなく、神に心を向けるということです。
スワミは、非暴力とは他人に暴力を振るわないということだけでなく、思い、言葉、行いのすべてにおいて人を傷つけてはならない、ということだとおっしゃいます。言葉で人を傷つけてもいけません。また、誰に対しても悪い感情をもたないようにすることが大切です。他人に悪意をもてば、他人を傷つけるだけでなく、それ以上に自分自身が傷つきます。そして、思い、言葉、行いを一致させて非暴力を実践することが大切です。愛を思えば、愛の言葉となり、愛の行いとなります。すべてのものを愛することが非常に大切です。
宇宙全体は神の身体であり、一人一人が神の分身です。誰に対しても暴力を振るってはいけません。それだけではなく、自分の身体に対しても暴力を振るってはいけないとスワミはおっしゃいます。自分の身体への暴力とは何でしょうか? スワミは、悪を見ることは暴力、悪を聞くことは暴力、悪を語ることは暴力とおっしゃいますが、五感を通じて摂取するものすべてを清めることが大切です。特に肉食については、動物を殺すことになるだけでなく、人間の動物的性質を強めてしまうとおっしゃられています。今年は、菜食に対する意識を高め、認識を深めることが重要です。さらに、スワミはしゃべりすぎを戒めています。しゃべりすぎによってエネルギーが浪費され、ちょっとしたことで怒りっぽくなってしまいます。神から授かったエネルギーを大切にするため、沈黙をすることが大切です。エネルギーを浪費して自分自身を傷つけないようにしなければなりません。
スワミは、自然界のバランスを崩すような行為も暴力であるとおっしゃいます。貪欲を満たすための森林破壊、大気汚染、環境汚染、放射能汚染は自然に対する暴力といえます。水、エネルギー、食料を無駄にすることも暴力につながります。このため、節制のプログラムの実践が重要になります。また、人間の欲望で汚染された環境を浄化するためには、神の御名を唱え、バジャンを歌うことによって大気を清めることが重要だとスワミはおっしゃられています。
非暴力を実践するためにはどうしたらよいでしょうか? 常に、神は遍在でありすべての内に神が存在すると思うことが必要となります。嫌いな人の中にも神を見ることができるようになれば、憎しみも消えていきます。このためには、ガヤトリー マントラや光明瞑想が重要になります。また、良心の声に耳を傾けることが重要です。良心に反して何かを行うことは、悪い行いであり、他人にも自分にも暴力となります。
ところで、完全な非暴力の実践は非常に困難であることが分かります。例えば呼吸をすることによって菌が死んでしまうことがあります。そのような自分の意志によらない暴力の報いを避けるためにも、神にすべての行為を捧げることが大切です。また害虫などが家に入ってくれば退治せざるを得ませんが、できるだけそうならないように、家を掃除して清潔にするなどの努力が大切です。常に、非暴力のレベルを高く保つことが大切です。
最後にまとめますと、非暴力とはあらゆるものに愛を広げることを意味します。また暴力とは欲望の増大を原因としているので、欲望に制限を設けることが必要になります。今年の霊性修行を進めるに当たって、非暴力、及び非暴力につながる愛に関するスワミの御教えを集中的に学ぶこと、バジャン、沈黙、ガヤトリー マントラ、光明瞑想などが非常に重要となります。今年一年を通しまして、スワミの恩寵が皆様に豊かに注がれますことをお祈りいたします。
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