特派員メモ・ サイババ効果

   朝日新聞 2004年1月14日 朝刊
シンガポール発
  

住宅街を車で運転中、流れる景色に異様なものを感じ、ブレーキを踏んだ。高さ3メートルはある巨大な写 真が民家の2階部分の壁に張り出されていた。アフロヘア、満面の笑み。インドの宗教家サイババだった。熱心な信者の家だろうか。

その日から、同氏との縁が不思議と深まった。

数日後、マレーシア取材で会った商店主と両替商は2人とも同氏の信者だった。「あの高官もマハティール前首相のあの親類も信者」などと裏話を聞いた。両替商の男性は「雷に打たれたような感動を味わう」と秘書らしき人物への紹介状をくれた。

サイババ効果

日本では怪しいイメージのサイババだが、インドや東南アジアでは今も絶大な人気を誇る。厳しい修錬や戒律を求めず、特定の宗教にこだわらない点も魅力のようだ。

それからも、喫茶店に同氏の本が置いてあったり、たまたま開いた地元紙に特集が載っていたり。「これはやはり、インドに行けということだろうか」と一瞬考えた。

取材の最後に話を聞いたインド系企業の社長も、またまたサイババ信者。最初は忙しそうで受け答えもぞんざいだったが、蓄えた知識でサイババの話題に持ち込み、話がはずんだ。「サイババ効果 」に感謝した。(野嶋剛)

特派員メモ・サイババ効果