全国スタディーサークル世話人より
10/27-11/9 は読書週間です。
私たちは是非様々なサイ文献を読み深めることが推奨されるとは思いますが、幸福について考えるときに、人類の共有遺産としてどうしても無視できない書物があると思い出されました。
おそらく人類にこれまで最もよく読まれた幸福論であるラッセルの「幸福論」です。
とても「探求への熱」が感じられます。
彼の幸福論では、人間が幸福になれない理由を「自信の欠如」としている点もスワミの御教えとの共通項が感じられ興味深いですが、第一次世界大戦と第二次世界大戦を生き抜いた方の幸福論であるところが、戦後に生きている私たちの世界観と異なる貴重な視点を与えてくれます。
個人による幸福の探求は確かに重要ですが、そうしている間に頭上から原子爆弾が降って来たのではどうしようもなく、まずは私たちが幸せでいられる社会をつくっていくことが大切になります(社会を良くするという視点もスワミの御教えと重なりを感じます)。
多くの普遍的な視点が、ノーベル文学賞の受賞にもつながり、世紀を超えても人々に感銘を与え続けてきたのだろうと思います。
晩年のラッセルは幸福を論じるだけでは不十分と考え、平和活動に没頭しました。
彼が身を投じたのは原水爆の禁止運動でした。
第二次世界大戦中にはアインシュタインがマンハッタン計画にサインし米国による原爆の開発が進められました。
ラッセルは原水爆の禁止と科学技術の平和利用を訴えるにはアインシュタインの署名を得ることが世界へのメッセージとして不可欠と考えていました。
ところがアインシュタインは死の床に伏しており、返信を得ることができずにいました。
そのようなある日、旅行中にパリの空港に下りたラッセルはアインシュタインの訃報を耳にして絶望しました。
どうしてもアインシュタインの署名が不可欠だと考えていたからでした。
ところが、アインシュタインが死の間際に署名した同意書が、その後郵送されラッセルの手元に届きました。
そうして世界に伝えられたメッセージがラッセルーアインシュタイン宣言でした(これには日本の湯川秀樹先生も署名されました)。
世界を幸福にしたいという渇望とはどのようなものであるのかを現代にも伝えてくれるエピソードであると思います。
探求、渇望、決意、実行、忍耐それらがすべて伴って初めて世界にインスピレーションを与えることができる、ということを教えてくれているように思えます。