分かち合うには、人が良すぎる

分かち合うには、人が良すぎる

 若い女性、キャリーは、大きな国際空港の搭乗ホールで彼女の飛行を待っていました。 彼女は疲れていて少し孤独でした。出発までまだ数時間あったので、暇つぶしに本を買うことにしました。 また彼女は、今まで見つけた中で、最高級の美味しいクッキーを購入することが出来ました。彼女は空港のVIPルームの肘掛け椅子に座り、心地よく読書をして時を過ごしました。

 クッキーの箱が置かれた肘掛け椅子の横に別の席があり、すぐに男性がそこに座りました。 数分後、彼は雑誌を開いて読み始めました。

 キャリーが最初のクッキーをつまんだとき、男性も手を伸ばし、1つ取りました。 彼女は苛立ちながら彼を睨めつけましたが、彼はなぜ彼女がそうしたなのかを分かっていないようでした。 彼は、ただビジネス雑誌を読むのに夢中でした。 「なんて失礼な人!」と彼女は思いました。「 何か言ってやろうかしら!」

 しばらくして、キャリーは別のクッキーを取り、男性はまた同じように一つクッキーを取りました! 彼女がクッキーを一つ食べるごとに、男性も一つ取りました。 彼女にとってそれはあまりにも腹ただしいことでした。 彼女は立ち上がって、男性に、思っていることを言ってやろうと思いましたが、できませんでした。 今まで彼女は、自分の本当の思いを人に伝えることせず、摩擦を避ける方を常に選んでいたのです。

 クッキーが1つだけになったとき、彼女は「このひどい男性は一体どうするつもりなんだろう。」と考えました。 男性は、最後のクッキーを取って、それを半分に分けて、残りの半分を彼女に差し出しました!

 ああ!それはもう耐えられないことでした! 彼女はカンカンに怒って、 自分の本とバッグを持って搭乗ゲートまで一目散に走り去っていきました。 振り返ると、男性が困惑した顔で彼女を見ていました。 「まあ、一部の人々は別の惑星に住んでいるのよね。」と彼女は思いました。

 キャリーは、あの失礼な男性から離れられたことにほっとして、飛行機の座席に腰を下ろしました。彼女はずっとバックに入れたままで読めなかった本を、今やっと読めると思い、自分の眼鏡をバックの中から探し始めました。すると驚いたことに、そこには彼女が購入したまま、まだ開封していないクッキーのパックがあるではありませんか!

「ああ、なんてこと!」彼女はとても自分が恥ずかしくなりました。彼女は、自分のクッキーをバックの中から実は取り出していなかったのです。自分は心の中であの男性を罵り、不平ばかり言っていたのにも関わらず、彼は、少しのためらいもなく、自分のクッキーを彼女に分け与えていたのです。そして今はもう、彼に自分が勘違いしていたことを説明することも、謝ることさえも、出来ないのです。

 これらすべてに気が付くには、もう遅すぎました。彼女には今、開封していない沢山詰まったクッキーのパックがあるだけでなく、随分考えるべきことも残されました。いつも、私達の日々の生活の中で、こうしたドラマが繰り広げられてます。私達のマインドで考える時、ハートを忘れないことに気をつけなくてはなりません。私達は、この男性のように「私」と「私のもの」という執着を超えて生きることができるでしょうか?

 スワミはおっしゃいます。

「手を差し伸べてくれる人にさえも、危害を与える人は本当に不幸です…。私達は危害を与える人達にさえ、手を差し伸べなくてはなりません。」

 人々の人生に灯火を照らす機会を決して逃がさないようにしましょう。それが、私達自身の人生を明るくするのです。

https://media.radiosai.org/journals/Vol_06/01JUL08/12-share.htm